外国人旅行者が日本で買い物をするときの消費税の免税が、2026年11月1日の購入分から「リファンド方式」というやり方に変わります。いまは店頭で税抜きの値段のまま買えますが、11月からは、いったん税込みで払って、出国するときに税関の確認を受けたあとで消費税分が戻ってくる形になります。
日本に住んでいる私たちが免税で買うことはあまりないので、「自分には関係ない話」と思うかもしれません。ただ、ドン・キホーテやデパートの混み具合、街の免税店の様子、ひいては日本の観光の景気にまで関わってくる話です。この記事では、何がどう変わるのか、なぜ変えるのか、私たちの暮らしに影響はあるのかを、順番にやさしく解説します。
免税のリファンド方式とは?いつから何が変わる?
これまでは「その場で税抜き」、11月からは「あとで返金」
まず、いまの仕組みから確認しましょう。日本では1989年に消費税が導入されたときから、外国人旅行者などが日用品や家電、化粧品などを買うときは、消費税がかからない価格で買える制度があります。免税店のレジで、パスポートを見せると、税抜きの値段で払えるわけです。
11月からは、この順番が入れ替わります。国税庁の資料によると、店ではいったん消費税を含んだ値段で払い、購入から90日以内の出国時に、空港や港で税関の確認を受けます。その確認が済んでから、消費税にあたる金額が返金されます。
たとえば税抜き1万円の品物を10%の税率で買う場合、これまでは店頭で1万円を払えば済みました。11月以降は、まず1万1,000円を払い、出国の手続きが終わったあとに1,000円が戻ってくるイメージです。
日付の基準は「購入日」です。2026年10月31日までに買ったものは、これまでどおり店頭で免税価格で買えます。両方の仕組みを並べて使える期間はありません。
新旧の違いを表で見る
| 2026年10月31日まで(現行) | 2026年11月1日から(リファンド方式) | |
|---|---|---|
| 支払い | 店頭で税抜き価格 | 店頭で税込み価格 |
| 免税が成立する時点 | 店で免税手続をしたとき | 出国時に税関が持ち出しを確認したとき |
| 税関の確認 | 持ち出す前提で、店頭で免税 | 購入から90日以内に、手荷物を預ける前に確認を受ける |
| 商品の区分 | 一般物品と消耗品で扱いが違う | 区分をなくす |
| 購入額の上限 | 消耗品は1日1店舗で50万円まで | 上限をなくす(持ち出せる数量まで) |
| お金が戻る形 | 戻らない(最初から免税) | 銀行振込・カード・アプリ・空港での現金など、店ごと |
上限の撤廃や区分の廃止は、旅行者にとっては使いやすくなる面です。ただ、そのかわりに「持ち出せる数量しか買えない」「90日以内に出国して確認を受ける」という条件がつきます。免税の条件が緩くなった部分と厳しくなった部分が、セットで入れ替わったと考えるとわかりやすいです。
リファンド方式の手続きと返金の流れ
旅行者が空港でやること
旅行者の側から見た流れは、観光庁などの案内では次のようになっています。
- 免税店で、同じ日に同じ店で税抜5,000円以上の買い物をして、パスポートを見せて税込みで支払う
- 出国する空港や港で、手荷物を預ける前に、免税手続用の端末にパスポートをかざす
- 画面に「グリーン」と出れば手続きは終わり。「レッド」と出たら、買ったものを持って税関の検査場所へ行く
- そのあと荷物を預けて出国。税関で持ち出しが確認されたら、お店か返金を請け負う事業者から消費税分が戻る
ポイントは「手荷物を預ける前」というところです。免税で買った品物をスーツケースの奥に入れて預けてしまうと、税関で見せられなくなります。国際線の出発ロビーに端末があるので、荷造りの順番まで気をつけないといけません。
もう一つ大事なのが、「購入記録」の単位です。購入記録に含まれる品物が1つでも欠けていると、その記録に含まれるすべての品物で返金が受けられない場合があると、大阪観光局の案内にも書かれています。食べた、使い切った、人にあげた、という品物があると困ることになります。
返金の方法は店ごとにばらばら
では、お金はどうやって戻ってくるのでしょうか。じつは、返金のやり方は法令では決まっていません。国税庁は、銀行振込、クレジットカード送金、アプリ送金、そして税関の確認を受けた出国港内での現金返金といった方法が考えられると説明しています。店が自分で返金することも、返金を請け負う事業者に任せることもできます。
このため、同じ免税の買い物でも、どの店で買うかによって、戻ってくる方法も時期も手数料も変わる可能性があります。旅行者にとっては、買う前に「どの方法で、いつ戻るのか」を店で確認することが大切になります。
なお、免税の対象になるのは外国人旅行者のほか、海外に2年以上住んでいる日本人など、いまの制度と同じ範囲です。日本に住んでいる人が普通に買い物をする分には、免税の対象外です。
なぜ変わる?リファンド方式にする理由と背景
狙いは「転売」の抑止
制度を変える一番の理由は、免税で買った商品が、日本の国内で売られてしまう問題です。免税は「海外に持ち出して使う」ことが前提ですが、税抜きで買った商品を国内で転売していると疑われる事例が、近ごろ相次いで発覚していると報じられています。
これまでの仕組みだと、店は税金を取らずに売るので、あとから「実際には持ち出されなかった」とわかると、店が免除した消費税を後から納めなければならないおそれがありました。リファンド方式なら、持ち出しが確認されたあとに免税が成立するので、この問題を減らせます。
免税の規模はどのくらい?
nippon.comの記事によると、外国人旅行者らへの消費税の免税額は2024年に2,000億円に上りました。観光庁の統計では、2025年の訪日外国人の旅行消費額は約9兆4,549億円で、10年前の3倍近くです。インバウンドが増えるほど、免税の総額も大きくなってきたことになります。
こうした中で、自民党内の勉強会は2025年6月に、免税の廃止を含めた見直しを党幹部に提言しました。一方で、全国免税店協会や日本小売業協会など10団体は2025年8月、免税による売り上げが年2兆円に達しているとして、「免税廃止は国際競争力を損なう」と制度の維持を求める意見書を出しています。
つまり、免税をめぐっては「税金を取りこぼしていいのか」という見方と、「観光客の買い物を支えている」という見方の両方があります。今回のリファンド方式は、廃止ではなく、転売などの不正を防ぎながら制度を続けるための見直しとして位置づけられています。
駆け込み需要は本当にある?店や企業の動き
時計店では10月の購入額が約2倍
実際に、変更を前にして店頭には動きが出ています。東京・横浜・中野・銀座でヴィンテージ時計の専門店を営むファイアーキッズによると、10月1日から18日までのインバウンド客の購入本数は、前の月の同じ期間の約1.7倍、購入額は約2.0倍でした。100万円以上の高額な品は約2.8倍だったそうです。
同社では、10月19日時点で来店客4,199人のうち、インバウンド客が2,963人と70.6%を占めました。お客さんからは、「空港で返金を待つより、店頭で免税になるうちに買いたかった」という声も出ているそうです。これはあくまで1社の発表ですが、「10月のうちに買っておこう」という動きの一例として読めます。
ドン・キホーテのPPIHは返金手数料を無料に
大手の対応も出てきています。ドン・キホーテなどを展開するPPIHは、11月1日から全国のグループ店舗で、リファンドの申請にかかる手数料を無料にすると発表しました。2026年6月期の免税売上高は2,286億円で、過去最高だったそうです。
ただし、PPIHの発表には但し書きがあります。空港で現金で受け取る場合だけ、返金事業者の決めた手数料がかかるとのことです。また、サービス内容や無料の条件は予告なく変わる場合があるとも書かれています。「返金手数料」は店によって違い得る、という点が、新しい制度のわかりにくさでもあります。
私たちの生活・仕事への影響は?
日本に住む人にとっての直接の影響はほぼない
先に書いたとおり、免税の対象は旅行者などです。日本に住んでいる私たちの買い物の値段が、11月から変わるわけではありません。消費税の税率そのものが変わる話でもありません。
街や職場で影響が出そうな場面
- 観光地やドラッグストア、家電量販店のレジの様子が変わる。PPIHは、手続きに要する時間が従来より短くなる見込みで、レジ待ちの短縮が期待できると説明しています
- 空港の出発ロビーでの手続きが増える。観光客だけでなく、空港で働く人にとっても新しい作業になります
- 小売やホテルの売店で働く人は、システムの対応や、お客さんへの説明が必要になる。経済産業省も免税店向けの準備ガイドを出し、説明会を10月に3回開いています
- 免税店が10月末までに「駆け込み」で混む可能性がある
仕事の面では、小売・観光・システム関係の人にとっては、まさに11月1日が山場です。一方で、たとえばお友達や取引先の外国人が日本に来るときは、「買い物は税込みで払うよ」「空港で手続きを忘れずに」と一言添えてあげるだけでも、親切に感じてもらえるでしょう。
価格や制度の変更が続く時期ですので、値上げ系の話題にも目を向けておくと雑談に役立ちます。たとえばのぞみの指定席の値上げや、税金まわりでは食料品の消費税1%の法案の記事もあわせて読むと、「いまお金の話題で何が動いているか」が整理できます。
雑談で使える!免税リファンド方式のひとこと
ネタ1:「免税って、じつは“税金を払わない”んじゃなくて“持ち出すなら払わなくていい”なんだって」
今回の変更の本質は、ここにあります。免税は「海外に持ち出すものには日本の消費税をかけない」という考え方です。だから、持ち出したことを確認してから免税にするのは、考え方としては筋が通っています。
ネタ2:「11月から、旅行者は一回ちゃんと税込みで払うんだよ」
これまでは「その場で安くなる」のが免税の魅力でしたが、11月からは「あとで戻る」に変わります。気分としては、ポイント還元に近いかもしれません。
ネタ3:「10月のうちに時計を買った人が2倍になった店があるらしい」
ヴィンテージ時計店の例は、10月の購入額が前月同期の約2倍でした。制度が変わる直前には、こうした駆け込みが起きやすいという話題として使えます。ただし、1社の発表ですので、「ある店では」と付けて話すのが安心です。
免税リファンド方式についてのよくある質問
Q. 日本人も免税で買えなくなるの?
もともと日本に住んでいる人は、免税の対象ではありません。海外に2年以上住んでいる日本人など、対象の範囲はいまと変わりません。
Q. 返金はいつ、いくら戻る?
税関で持ち出しが確認されたあとに、消費税相当額が返金されます。時期や方法、手数料は店や返金事業者ごとに違う可能性があるので、買う時に確認するのが確実です。
Q. 手荷物に入れて預けてしまったらどうなる?
手荷物を預ける前に、免税手続用の端末で確認を受ける必要があります。預けたあとでは確認が取れず、返金が受けられないおそれがあります。
Q. 90日はいつから数える?
購入日の翌日から数えて90日目までです。国税庁の例では、11月1日に買った場合の期限は翌年1月30日です。
Q. 5,000円以上というのは?
同じ店で同じ日に買った、税抜5,000円以上が目安です。金や白金の地金など、対象外の品物もあります。
まとめ
免税のリファンド方式は、「その場で税抜き」から「税込みで払って、出国時の確認後に返金」へと順番を入れ替える変更です。2026年11月1日の購入分から始まり、10月31日までの購入分は従来どおりです。
旅行者は、90日以内に、手荷物を預ける前に空港の端末で手続きをするのがポイントになります。店の側では、返金の方法や手数料がまだ横並びではなく、PPIHのように手数料無料を打ち出す企業も出ています。日本に住む私たちの買い物の値段が直接変わるわけではありませんが、観光と小売の現場にとっては大きな節目です。
廃止論も含めて議論が続いてきた制度なので、11月以降にどれだけ転売が減り、旅行者の買い物がどう変わるのかは、これから見えてくるところです。
参考ソース
- 国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/menzei/201805/format/002.htm
- nippon.com(Yahoo!ニュース)「免税店での購入、11月から「リファンド方式」に 制度の廃止をめざす動きも」(2026/10/19) https://news.yahoo.co.jp/articles/4856810129364cb4335bdb2d8196b2ba1f095dff
- 経済産業省「免税店向け「リファンド方式」移行の準備ガイド」(2026/9/17) https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/260917_taxrefund.html
- 経済産業省 リファンド方式 準備ガイド(PDF) https://www.meti.go.jp/files/000004744.pdf
- ファイアーキッズ プレスリリース(時事ドットコム)(2026/10/19) https://www.jiji.com/jc/article?g=prt&k=000000040.000118292
- PPIH「返金手数料無料で新免税制度のリファンド申請に対応」(2026/10/8) https://digitalpr.jp/r/145069
- 大阪観光局「2026年11月1日から日本の免税手続きが変わります!」 https://mice.osaka-info.jp/whyosaka/news/2026/changes-japan-tax-refund.php
- MICHI「免税リファンド方式 2026|11月1日から・空港での手続きと返金方法」(2026/10/13) https://michi-japan.group/ja/articles/japan-tax-free-refund-2026
- kankobusiness「免税店の仕組みとは?リファンド方式・許可の条件・申請の流れ」(2026/10/13) https://kankobusiness.com/guides/inbound/inbound-tax-free/
- 日本時事新聞「免税制度、11月1日に「リファンド方式」へ」(2026/9/20) https://jpjj.jp/articles/tax-free-refund-method-preparation-guide/
- 国税庁公式X(リファンド方式の解説動画の案内、2026/1/29) https://x.com/NTA_Japan/status/2016792178933088546
- Visit Japan公式X(2026/7/30) https://x.com/Visit_Japan/status/2082737461529313764

