インフルエンザは、今年はもう「注意報」のレベルに入っています。厚生労働省が10月9日に発表した最新の数字では、全国の平均が1医療機関あたり11.35人。注意報の目安である10人を超えたのは、去年より約1カ月早く、患者数は前の年の同じ時期のおよそ7倍です。
「まだ10月なのに?」と思った方は多いはずです。実際、職場や学校でも「うちの子のクラスが閉鎖になった」「隣の席の人が休んでる」といった話がちらほら出はじめています。この記事では、何がどれくらい早いのか、なぜこんなに早く広がったのか、そして今からできることを、順番にやさしく整理します。
インフルエンザ注意報とは?今、何が起きているのか
全国平均11.35人。注意報の基準を今シーズン初めて超えた
厚生労働省は毎週金曜日に、全国約3,000カ所の「定点医療機関」から集めたインフルエンザの患者数を発表しています。定点医療機関とは、患者数を継続して報告してくれる、いわば観測所のような病院やクリニックのことです。
10月9日に出たのは、9月28日から10月4日までの1週間分でした。報告された患者は全国で4万2,320人。1つの医療機関あたりに直すと11.35人で、前の週の7.17人から約1.6倍に増えています。
ここで出てくる「注意報」と「警報」は、天気予報のような言葉ですが、中身は決まった数字です。1医療機関あたり10人を超えると注意報、30人を超えると警報の水準になります。時事通信は、注意報レベルを「4週間以内に大流行が起きる可能性を示す水準」と説明しています。つまり今は、大きな流行の手前まで来ている、と読むのが自然です。
都道府県別では沖縄が突出、首都圏も高い
地域でみると差が大きいのも今回の特徴です。主な都県の数字を表にします(1医療機関あたり、9月28日〜10月4日)。
| 都道府県 | 1医療機関あたり | 目安 |
|---|---|---|
| 沖縄 | 37.07人 | 警報の水準(30人)を超えた |
| 埼玉 | 19.66人 | 注意報の水準(10人)超え |
| 千葉 | 18.72人 | 注意報の水準超え |
| 神奈川 | 18.51人 | 注意報の水準超え |
| 東京 | 15.87人 | 注意報の水準超え |
| 茨城 | 13.60人 | 注意報の水準超え |
| 熊本 | 10.20人 | 注意報の水準超え |
10人を超えたのは全部で16都県でした。7月に大きな地震があった熊本も10.20人と、ぎりぎり基準を上回っています。いっぽう、すべての都道府県で「流行開始の目安」とされる1人は超えているので、地域差はあっても、日本全体で流行期に入っているのは間違いありません。
学校はすでに影響が出ている
子どもの間の広がりも早く、この1週間で休校になったのが8施設、学年閉鎖が171施設、学級閉鎖が758施設。幼稚園や保育園、小中高校をあわせて、全国で937の施設が何らかの措置をとりました。ジャパンタイムズは、学級閉鎖などが前の週の約6倍になったと伝えています。
ちなみに、今シーズンの「流行入り」は8月28日に厚生労働省が発表していました。感染症法ができた1999年以来、2番目に早い流行入りです。夏の終わりからじわじわ増えて、10月に入って一気に数字が跳ねた、という流れになります。
東京都はこれより早い9月17日に、都内の患者数が注意報の基準を超えたと発表していました。9月7〜13日の週で9.53人。去年はこの基準を超えたのが10月20〜26日の週だったので、6週も早い計算です。毎日新聞によると、1999年以降では2023年と並ぶ最速で、報告された患者のうち9歳以下が約半分(50.49%)を占め、小学生を中心に広がっていました。
流行のスピードについて、産経ニュースは厚生労働省の関係者が「いまのところ想定の範囲内」と受け止めていると伝えています。いっぽうで、冬にかけてさらに広がる恐れもあるとして、一部の自治体は高齢者などを対象にしたワクチン接種を前倒しで始めました。
なぜ今年は早い?インフルエンザ流行の理由
専門家が挙げる最大の理由は「コロナ禍の影響」
国立感染症研究所のインフルエンザ研究センターの渡邉真治室長は、熊本朝日放送(KAB)の取材に、流行が早まった理由のひとつとして、コロナ禍の影響を挙げています。
コロナの時期には、インフルエンザを含むいろいろな感染症が抑え込まれていました。そのせいで、人々の免疫が十分に育っていない部分がある、という見方です。渡邉室長は、コロナ以前なら流行入りは11月の初めから中ごろ、おそくて12月の初めくらいが一般的だったと説明したうえで、コロナ後は流行の入り方や大きさのぶれが大きくなっていると話しています。
今シーズンはH1N1というタイプが広がっていて、その前にアジアで流行していたものが、東南アジアや南アジアから入ってきたと遺伝子の情報から考えられるそうです。
お医者さんの見方:旅行客と長雨
FNNプライムオンラインの報道では、東京のクリニックの伊藤博道院長が、別の角度から理由を語っています。ひとつは、円安もあって夏から秋にかけて南半球からの旅行客が多く、ウイルスが一緒に入ってきたのではないか、という点。もうひとつは、長雨や台風、豪雨で外での活動が減り、寝不足や運動不足で免疫力が落ちた人が多かったのではないか、という点です。
ここは大事なところなので書き添えますが、これらはあくまで現場の医師の見立てです。「これが原因だ」と国が公式に認めたものではありません。ウイルスの専門家の説明と、お医者さんの実感の両方を知っておくくらいがちょうどよいと思います。
「インフルは冬の病気」とは限らなくなってきた
厚生労働省のページには、日本では例年12月から3月が流行シーズンだと書かれています。ただ、今回のように8月から流行入りして10月に注意報、という年が出てくると、「インフルエンザ=冬」という感覚はそろそろ更新したほうがよさそうです。
秋はもともと、季節の変わり目で体調をくずしやすい時期です。寒暖差で疲れがたまり、イベントや連休で人の移動も増えます。そこへ、免疫が弱めのまま早い流行がかさなる。今年はそんな条件がそろってしまった、と整理すると、ニュースの意味がつかみやすくなります。
インフルエンザ注意報で私たちの生活はどう変わる?
連休明けが山場になる可能性
FNNの番組内で伊藤院長は、「連休明けは感染者のピークではないか」という見方を示しています。人が集まる連休のあとは、数日おくれて患者が増えるのが一般的だからです。これは医師ひとりの予想ですが、連休のあとに増えやすい、という流れ自体は納得しやすい話でしょう。
厚生労働省の次の発表は、10月16日(金)の予定です。連休をはさんだ週の数字は、まだ出ていません。数字がさらに上がるのか、少し落ち着くのかは、その週ごとの発表を見ながら確かめるしかありません。
職場・学校・家庭で気をつけたいこと
厚生労働省は、インフルエンザの症状として、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身のだるさが急に出るのが特徴だと説明しています。のどの痛みや鼻水、せきも風邪と同じように出ます。子どもではまれに急性脳症、高齢者や免疫が落ちている人は肺炎をともなって重くなることがある、とも書かれています。
広がり方にも注意が必要です。ウイルスは発症の前日から発症後3〜7日ほど、鼻やのどから出ていると言われています。つまり「まだ症状がない日」や「熱が下がった後」にも、人にうつす可能性があるということです。職場でマスクをつけたり、換気をしたり、といった基本が意外と効いてきます。
治療薬は、発症から48時間以内に飲みはじめると、発熱の期間が通常1〜2日短くなり、ウイルスの出る量も減るとされています。48時間をすぎると十分な効果は期待しにくい、というのも厚生労働省の説明です。急な高熱が出たら、様子見で何日も我慢するより、早めに受診したほうが得だということです。
予防接種はどうする?フルミストと「インフル保険」
インフルエンザのワクチンについて、厚生労働省は「感染後に発症する可能性を低くする効果と、重症化を防ぐ効果がある」と説明しています。65歳以上の方と、60〜64歳で一定の持病がある方は、定期接種として年に1回受けられます。
FNNの報道では、鼻にスプレーするタイプの「フルミスト」も紹介されていました。対象は2歳から18歳で、注射だと13歳未満は2回必要なところが1回で済みます。ただ、接種の翌日に高熱が出た場合、副反応なのか本当に感染したのか区別しにくいことがあり、医師と事前によく相談したほうがよいと、伊藤院長が注意をうながしていました。
もうひとつ話題になっているのが「インフル保険」です。PayPayは月額250円から、楽天ペイは230円からのプランがあり、感染して抗インフルエンザ薬を処方されると3,000円が受け取れる、という内容だと報じられています。PayPayによると、加入者は流行にあわせて2025年の約4倍のペースで増えているそうです。保険は人によって合う合わないがあるので、条件はよく読んでから決めるのがおすすめです。
それから、免疫を保つための食事の話も出ていました。ウイルスと闘う免疫細胞や抗体はタンパク質からできているため、肉類や大豆製品、乳製品をしっかりとりましょう、という内容です。1日に必要な量は、成人男性で65グラム、女性で50グラムとされています。ちなみに、同じく食卓で気になる白菜の高騰については白菜が高い理由を解説した記事にまとめています。鍋の季節に向けて、よければ合わせてどうぞ。
熱が出たときの動き方をあらかじめ決めておく
いざ高熱が出てから考えると慌てるので、元気なうちに段取りだけ決めておくのがおすすめです。かかりつけの医療機関の診察時間と電話番号を控えておく、体温計と解熱後に食べられるもの(おかゆやゼリー、スポーツドリンクなど)を家に置いておく、職場には「熱が出たら出社せず、まず連絡する」と伝えておく、といったことです。
流行期は病院の待合室がこみ合い、予約が埋まりやすくなります。48時間という薬のタイミングを逃さないためにも、まずは電話で受診方法を確認する、という手順をふむと動きやすくなります。家族がかかった場合は、タオルやコップを分ける、同じ部屋で過ごす時間を減らすなど、できる範囲で距離をとりましょう。
インフルエンザ注意報の雑談ネタ3つ
職場でのちょっとした会話に使えそうな話題を3つ用意しました。
ネタ1:「今年、流行入りは8月だったらしいですよ」
夏休みの終わりごろに流行入りが発表されていた、というのは、意外と知られていません。感染症法ができた1999年以来2番目の早さ。「インフルって冬のものだと思ってたけど、もう違うんですね」と話を振りやすい数字です。
ネタ2:「去年の7倍って言われても、ピンとこないですよね」
去年の同じ時期は1医療機関あたり1.56人でした。それが今年は11.35人。7倍と聞くと驚きますが、「去年が特別に少なかったから比べると大きく見える」という側面もあります。数字の見え方の話は、雑談のきっかけとして盛り上がります。
ネタ3:「インフル保険ってあるんですね」
スマホ決済のアプリから、月250円ほどで入れる保険があるのは、まだ知らない人も多いはずです。「3,000円もらえるなら、薬代と診察料のたしになるかも」「でも条件はちゃんと見ないとね」と、お得かどうかの話にも広げられます。
インフルエンザ注意報についてよくある質問
Q. 注意報が出たら、外出や出勤を控えるべきですか?
注意報は、あくまで「大きな流行が起きるかもしれない」という目安で、外出を禁止するものではありません。厚生労働省は、外出後の手洗い、適度な湿度の保持、十分な休養、バランスのとれた栄養、人混みや繁華街を避けること、こまめな換気などを基本の対策としています。体調に違和感があるときは、無理をしないことがいちばんです。
Q. 今年のインフルエンザは重症化しやすいのですか?
今回調べた報道や厚生労働省の資料の範囲では、「今年のウイルスは特に重症化しやすい」と示すものは見つかりませんでした。ただし、小さな子どもや高齢者、持病のある方は、毎年重くなることがあるとされています。早めの受診がやはり大切です。
Q. 流行はいつまで続きますか?
これは誰にも断言できません。流行のピークを予想するには、毎週の発表を追うしかない、というのが正直なところです。今回は流行入りが早かったため、例年よりも長く続く可能性を心配する声はありますが、確かな根拠のある予測は今のところ報じられていません。
Q. 最新の患者数はどこで見られますか?
厚生労働省が、9月から4月ごろまで毎週金曜日の14時に発生状況を報道発表しています(祝日などで曜日が変わる場合があります)。お住まいの都道府県が出している週報も、地域の状況を知るには便利です。
まとめ:早すぎる流行、基本の対策を今日から
今年のインフルエンザは、8月の流行入りから10月の注意報まで、異例の早さで進んでいます。全国平均は11.35人で前年の約7倍、学級閉鎖などの措置をとった施設は全国で937にのぼりました。
理由については、コロナ禍で免疫が育っていないこと、アジアなど海外からウイルスが入ったこと、長雨で体調をくずしやすかったことなどが、専門家や医師から挙げられています。連休明けにさらに増える可能性もあり、次の厚生労働省の発表は10月16日の予定です。
今日からできることは、手洗いと換気、睡眠と食事、そして高熱が出たら48時間以内に受診すること。予防接種を迷っている方は、かかりつけの医師に相談してみてください。
参考ソース
- 日本経済新聞「インフルエンザ今季初「注意報」 2025年同期比7倍に」(2026/10/9) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF099900Z01C26A0000000/
- 時事メディカル「インフル、注意報レベルに=首都圏で多く、沖縄は警報―厚労省」(2026/10/9) https://medical.jiji.com/news/61661
- 産経ニュース「令和8年のインフルエンザは異例の早期流行」(2026/10/14) https://www.sankei.com/article/20261014-5ZRT4COHDFOSBALHKXO2IQELHU/
- 日テレNEWS NNN「インフルエンザ感染者数 前年比約7倍 16都県で「注意報」レベル」(2026/10/9) https://news.ntv.co.jp/category/society/9cfd8939f2ee4a769426186366c207be
- The Japan Times “As influenza cases rise, residents rush to get flu shots”(2026/10/9) https://www.japantimes.co.jp/news/2026/10/09/japan/science-health/japan-flu-cases-jump/
- KAB ONLINE「インフル急速蔓延の背景に“新型コロナ” 専門家が分析」(2026/10/10) https://www.kab.co.jp/news/article/16956641
- FNNプライムオンライン「インフルエンザ患者が急増、全国で注意報レベル超え」(2026/10/14) https://www.fnn.jp/articles/-/1131898
- 毎日新聞「都内のインフルエンザ感染者、注意報レベル超え 過去最速タイ」(2026/9/18) https://mainichi.jp/articles/20260917/k00/00m/310/295000c
- 産経ニュース「インフルワクチン接種、一部自治体で前倒し」(2026/10/14) https://www.sankei.com/article/20261014-UW766DVE6JP5JBVG2552RJNHJI/
- 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html

